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『すばるイブニングコンサート 三重野奈緒ピアノリサイタル』公演レポート   2013.06.26

 

第17回目のピアニストは東京芸術大学1年生の三重野奈緒さんです。

三重野さんはリストとラヴェルの曲でプログラムを構成されました。まずは有名なリストの「愛の夢第3番」。美しいメロディーが温かくふくよかな音色で奏でられていきます。楽想が華やかに展開していきますが、伴奏にのりつつも旋律が際立ち、元は歌曲として作られた曲だということを感じさせてくれる、歌心たっぷりの演奏でした。続いてもリストの作品で、三重野さんが大好きだという「ピアノ・ソナタ ロ短調」。力強い打鍵から生み出される残響が会場に響き渡り、激しい表情をのぞかせたかと思えば、ピアニッシモでもしっかりと音を引き出し、繊細な表情もうかがうことができました。長大な作品が持つ様々な要素を、音量、リズム、テクニックをコントロールしながらダイナミックな作品に構築し、更に三重野さんの歌心が加えられた素晴らしい演奏を聴かせてくださいました。そして、最後はラヴェルの「夜のガスパース(全曲)」。“オンディーヌ”では、弱音の連打による不思議なトーンが“水”の世界を作り出します。その細かな振動が水面の様々な表情を再現しているようで、幻想的な雰囲気に包まれました。“絞首台”では葬送行進曲を思わせるような不気味なテンポと旋律が、やがて消え入るように終わりを告げます。“スカルボ”では小悪魔が悪戯をするかの如く、鍵盤上を激しく指が駆け巡ります。悪戯もやがてその度合いが大きくなり、演奏も激しさが増してゆきます。息をのむような緊迫した空気に包まれたかと思うと、突然に姿を消してしまう様子を見事に表現してくださいました。

三重野さんの演奏は独自の歌心に溢れていて、今回演奏してくださったどの曲にもそのメロディーを味わうことができました。その歌心が大きな魅力となって、これからも多くの人の心を惹きつけていくと思います。

(担当職員T)

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