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『すばるイブニングコンサート 志賀由梨ピアノリサイタル』公演レポート   2023.01.13

 

第57回目のピアニストは兵庫県立西宮高等学校3年生の志賀由梨さんです。
志賀さんはコンサートの前半にピアノ・ソナタを2曲用意してくださいました。まずは、ベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第30番」。第1楽章では優しさに満ちた音色が暖かいハーモニーとなって会場を包み込みました。第2楽章では活き活きと力強い左手のリズムに乗せて透き通ったメロディーが重ねられました。第3楽章の主題は祈りを込めるように丁寧に、そして変奏部分もしなやかで躍動感のある演奏をしてくださいました。続いて、プロコフィエフの「ピアノ・ソナタ第6番『戦争ソナタ』より第4楽章」。無機質で不気味な音色がモノトーンの世界を、そして速いテンポが緊張感を表しているかのようで、緊迫と絶望を感じる演奏でした。そして、後半に演奏してくださったのはショパンの作品から4曲。まずは「プレリュードから“雨だれ”」。この日は奇しくも雨模様となりました。夕方から降り始めた優しい雨が、夜半に雷を伴う激しい雨に変わり、夜明けの光が差し込むと止んでいく…。そんな物語を描くような演奏でした。続いて「エチュードからOp.10-1と4」。Op.10-1は右手が奏でる音階の一音一音の美しい響きを、左手の和音がしっかりと支えていて、大小のうねりを描くような演奏でした。Op.10-4は素早い指裁きの中でも響きを大切にした演奏で、強弱も加わり変化に富んだ演奏でした。そして、最後に演奏してくださったのは「バラード第4番」。呼吸を整えて心を落ちつけた演奏が始まると、たちまち音色が澄み切った音に変化しました。志賀さんの思い描くショパンの人生を語りかけるように、ドラマティックな演奏を聴かせてくださいました。
志賀さんはとても温かく優しさのある音色をお持ちで、音楽の随所にご自身が表現したいことを感じさせてくださいます。これからも丁寧な音楽づくりを大切に、幸福感いっぱいの音楽を多くの方に届けていただきたいと思います。

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