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『すばるイブニングコンサート 中田蒼唯ピアノリサイタル』公演レポート   2023.01.31

 

第58回目のピアニストは神戸市立大池中学校3年生の中田蒼唯さんです。
中田さんのコンサートはバッハ「平均律クラヴァーア曲集第1巻第21番より“フーガ”」で始まりました。優しく柔らかな音色が会場に響き渡ります。一足早い春の訪れを感じさせるような温かい演奏でした。次に演奏してくださったのはベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第7番より第1楽章」。小気味のよい伸び伸びた演奏で、よどみのない溌剌とした音楽が奏でられました。このコンサートに込めた中田さんの素直な思いが伝わってくるようでした。続いてもソナタ作品でメンデルスゾーンの「幻想曲“スコットランド・ソナタ”」。第1楽章では粒だったアルペッジョが幻想的な空間を作り出していきました。第2楽章では響きを確かめながら、ゆっくりと歩みを進めるような質実な演奏でした。第3楽章は一転し力強いリズムに情熱を重ねあわせた心に迫る演奏を聴かせてくださいました。そして後半はショパンの作品からまず「スケルツォ第1番」。冒頭から音が火花を散らすかのような躍動感あふれる演奏で、中間部では反対に陰影をしっとりと描いてくださいました。そして「マズルカから第43・44・45番」。43番では切ないメロディーがマズルカのリズムに乗って優しく語りかけてくるようでした。44番では童話の世界に引き込むような温かな音色が印象的でした。45番では哀愁漂う楽想を情感たっぷりにゆったりと奏でてくださいました。そして最後はデュティユーの「ピアノ・ソナタ第3楽章“コラールと変奏”」。ピアノの音が固く乾いた音に変化します。目まぐるしい曲の展開に対して、なめらかな指裁きと強弱の変化で対応し、劇的な世界が力強く構築されました。
中田さんは音の変化が多彩で、曲のキャラクターに合わせた音色が印象的でした。また、情熱がほとばしる演奏も魅力的です。これからもいろんな作品に対してご自分のスタイルを磨いていかれることと思います。これからの更なる成長が楽しみです。

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