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『すばるイブニングコンサート 吉原佳奈ピアノリサイタル』公演レポート   2016.06.29

 

 

 

 

 

 

第35回目のピアニストは大阪教育大学附属高等学校池田校舎1年の吉原佳奈さんです。

 

吉原さんのプログラムはバロック~古典の作品で始まりました。最初に演奏してくださったスカルラッティの「ソナタニ長調K.492」では、軽やかに美しく粒ぞろいの音が会場に響き渡ります。次の、ラモーの「クラブサン組曲集第2番“未開人”」では、明快な旋律がテンポよく流れていきます。続いて、ハイドンの「ソナタハ長調Hob.ⅩⅥ/50より第1楽章」では、明るく可愛らしい楽想で始まると、右手と左手の旋律が互いにバランスよく主張しあい、いろんな絡み合いをしながら展開していきます。この最初の三曲で、梅雨空に光が差し込むような明るい雰囲気に会場が包まれました。そして、次は時代が変わってスクリャービンの「ピアノ・ソナタ第2番“幻想ソナタ”」。第1楽章の静かに厳かなハーモニーが響くと今度は会場が幻想的な雰囲気に包まれます。やがて、緩やかに優しくロマンティックなメロディーが現れ、曲が展開していくにつれ雄大な音楽の世界に誘われていきます。第2楽章は、素早い音の流れと力強さを備えた曲想ですが、吉原さんは曲んの流れと音量のバランスを上手く抑制し、音楽が幻想の世界に昇華するかのような美しい演奏を聴かせてくださいました。そして、続いても幻想がテーマにされた作品で、メンデルスゾーンの「幻想曲 スコットランドソナタ」を演奏してくださいました。波のうねりをあらわすかのような上昇下降音に続いて現れる甘美で切ないメロディーが、物語の始まりを告げると、やがて物語が様々に綴られ、ドラマチックに展開していきました。そして次は吉原さんが一番好きというリストの作品から「リゴレットによる演奏会パラフレーズ」を演奏してくださいました。高音部の響きがとても美しく、朗々とメロディーを歌ってくださいます。踊り出すかのような軽やかなリズムと旋律が、巧みな技巧で表現されていて、ロマンスにあふれた演奏を聴かせてくださいました。そして最後は、バルトークの「3つのブルレスケ」。現代音楽の先駆けらしく、奇抜で独特なメロディーとハーモニーで構成されていて、とても複雑なニュアンスに満ちていますが、吉原さんは初めて取り組んだとは思えないくらい、作品の構造をしっかりと捉えた演奏を披露してくださいました。

 

吉原さんの音色は音の粒が際立っていて、綺麗なハーモニーを創りだしていきます。また、その際立った音が曲の細部まで行き渡り、余すところなく音楽を表現してくださいます。これからも珠玉の音色を大切に、音楽を輝かせてほしいと思います。

 

(担当職員T)

 

 

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