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『すばるイブニングコンサート 辻本莉果子ピアノリサイタル』公演レポート 2018.02.06
第41回目のピアニストは東京芸術大学2年の辻本莉果子さんです。
辻本さんが最初に演奏してくださったのはバッハの「平均律クラヴィーア曲集第1巻第13番」。辻本さんの奏でる優しく温かい音色がゆったりと会場に響きわたり、コンサートに柔らかな光が差し込むように、美しく喜びに溢れた雰囲気に会場が包まれました。続いて演奏してくださったのは、シューマンの「ピアノソナタ第2番」です。第一楽章の冒頭から若々しいシューマンの情熱が迸ります。その情熱を表現するかのように、素早い曲の流れでもあるにもかかわらず、躍動感にあふれ、鋭い切れ味のある音色で演奏してくださいました。第二楽章では内なる思いを切々と歌った楽想を、右手と左手の音の受け渡しやバランスに気を配りながら、優しく語りかけるように演奏してくださいました。第三楽章では激しさの中にも高音と低音のコントラスが際立った迫力ある演奏をしてくださいました。 第四楽章ではシューマンの音楽的工夫、表現の多彩さが際立つようなダイナミックで力強い演奏で絞めてくくってくださいました。そして、後半の最初に演奏してくださったのはショパンの「ノクターンOp.27-1」。低音の深い響きにのせて、不安感を吐露するかのようなメロディーが一音一音丁寧に紡がれ、切ない旋律はやがて優しさに包み込まれ不安から解放されるかのように昇華していきました。そして、最後に演奏してくださったのは、スクリャービンの「幻想曲」です。スクリャービンのリズム感、音の響きが、多様なメロディーと絡み合いながら多彩な色彩を放ちドラマティックに展開していきます。辻本さんはスクリャービンの壮大な世界観を表現した雄大なこの曲を、曲に飲み込まれることなく、堂々と正面から向き合った演奏をしてくださいました。
辻本さんは優しい音色をお持ちで、スクリャービンの幻想曲のような雄大な音楽を俯瞰して描き出せるような、素晴らしい表現力もお持ちです。これからも、その音色と表現力を活かして、様々な曲の魅力を聴衆に伝えていっていただきたいピアニストです。
(担当職員T)
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