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『すばるイブニングコンサート 川上夢呼ピアノリサイタル』公演レポート 2015.12.27
第30回目のピアニストは東京芸術大学器楽科2年の川上夢呼さんです。
川上さんのプログラムはドビュッシーのベルガマスク組曲(全曲)で始まりました。第一曲「プレリュード」が始まると、優しく柔らかい音色が会場に響き渡り、ゆたっりと時間が流れてゆきます。第ニ曲「メヌエット」では曲の表情が繊細に変化していきます。第三曲「月の光」では静寂なピアニッシモの表現が印象的で、さまざな形の光の波が美しく描かれました。第四曲「パスピエ」は一転して歯切れの良いリズムに乗せて、滑らかな舞曲が表現されました。続いては、チャイコフスキーの「ドゥムカ~ロシアの農村風景~」。ゆったりとしたシンプルな主題、まるで農夫が口ずさんでいるかのような低音のメロディーで始まると、やがて高音の伴奏が表れ次第に活気づき華やかな中間部へと展開してゆきます。まるでカデンツァのような技巧的な部分も、川上さんは集中力を保ちしっかりと力強く演奏してくださいました。そして次は、ワーグナー=リスト編曲の「イゾルデの愛の死」。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の最後に演奏される曲で、リストがピアノ独奏用に編曲したものです。リストの演奏技術と編曲力を込めた重厚な音がオーケストラを髣髴させます。鳥のさえずりにも似た鍵盤の連打に乗せて、美しい愛のメロディーが奏でられていきます。最後は祈りが天に届いたかのように消え入って、感動的なフィナーレを創り上げてくださいました。そして最後はリストの「バラード第2番」。冷たい嵐が吹き荒れている中に、柔らかく暖かい光の旋律が現れ、まるで光と闇が溶けあっていくさまを描いたかのような作品で、川上さんは荘厳で光の渦に包まれるような世界を表現してくださいました。
川上さんはとても暖かく、優しい音色をお持ちで、演奏を聴いていると心地よい時間が流れてゆきます。また、息づかいがとても自然で、聴き手の心になじみやすい演奏をしてくださいます。これからもたくさんの人に真っ直ぐな演奏を届けてほしいと思います。
(担当職員T)
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