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『すばるイブニングコンサート 矢野百華ピアノリサイタル』公演レポート 2014.05.24
第22回目のピアニストは京都市立芸術大学2年生の矢野百華さんです。
矢野さんのプログラムの1曲目は、バッハの「平均律クラヴィーア曲集第2巻から第23番」。初夏の緑豊かな小道を散歩するかのように、朗らかな雰囲気に満ちた前奏曲と、夜の静寂の中、静かにきらめく星々のように輝くフーガを、美しい自然をありのまま描き出すように優しく演奏してくださいました。
続いては、シューベルトの「ピアノ・ソナタ第13番」。歌曲の王・シューベルトらしい歌心に満ちたこの曲を、矢野さんはとても愛らしく、柔らかい音色で演奏してくださいました。第一楽章では乙女心が躍るような喜びを、第二楽章では少し物憂げに乙女心が揺れる様子を、第三楽章では、軽やかで愛らしい乙女のさまざま表情を描くように表現してくださいました。弾いて聴かせるには大変難しい作曲家ではありますが、素晴らしいシューベルト弾きに出会えた瞬間でした。
そしてプログラムの後半はショパンで「スケルツォ第4番」と「バラード第4番」。いずれも4曲ずつ作曲されていて、その最後に作られた大曲です。スケルツォの前半部分は、技巧を駆使して細部まで小気味よく流れるように、そして高音部を美しくかき鳴らしたかと思えば、中間部の物憂げな旋律はしっとりと歌い上げ、最後は力強く華麗な世界を描き出して、幅の広い堂々とした演奏をしてくださいました。また、バラードは美しい旋律を支える低音のバランスが素晴らしく、心の深くまで音楽が足跡を残します。曲想は展開と共にうねりを増しますが、それを余すことなく表現するように、情熱にあふれた演奏してくださいました。
優しく、柔らかく、愛らしい音色がとても印象的な演奏をしてくださった矢野さん。人の心を弾けつけるような歌心あふれる演奏を、たくさんの人の心に刻んでほしいと思います。
(担当職員T)
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