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『すばるイブニングコンサート 大倉卓也ピアノリサイタル』公演レポート   2016.05.11

 

 

 

 

 

第34回目のピアニストは京都市立芸術大学4年の大倉卓也さんです。

 

 

大倉さんは前半をヘンデル、後半をリストという、時代のコントラストがはっきりしたプログラムを組んでくださいました。最初に演奏してくださったのはヘンデルの「クラヴィーア組曲第1巻より第5番」。プレリュードでは、大倉さんの澄んだ清潔感のある音色が、即興的で自由な曲想をゆったりと奏でていきます。アルマンドでは、響きを大切にしながら美しく清らかな雰囲気を作り出してくださいました。クーラントは、躍動感ある軽快な曲で、めまぐるしい音の動きが印象的でした。エアと変奏曲は、「調子の良い鍛冶屋」と呼ばれ広く知られている曲です。おもわず口ずさみたくなるようなテーマ(主題)が次々と変奏されますが、それにあわせて華やかで活き活きとした演奏を聴かせてくださいました。続いてもヘンデルの作品で「シャコンヌ」。朗々とした主題で始まると、変奏曲形式で展開してゆきます。前半の変奏では指がこきみよく動き回り明るく楽しい変奏が続きます。中間部では短調の哀愁を帯びた旋律が現れます。また後半は力強さが加わり華やかな終わりを迎えました。そして後半は、まずリストの「巡礼の年 第2年への追加“ヴェネツィアとナポリ”」を演奏してくださいました。第1番の「ゴンドラを漕ぐ女」では、優しく柔らかなメロディーが絵を描くように色彩豊かに奏でられました。第2番の「カンツォーネ」では伴奏のトレモロが打って変わって険しい空間を作り出しました。第3番の「タランテラ」では、男性的で雄大な表現をしてくださいました。最後は、同じくリストの作品から「メフィストワルツ第1番」。この曲はピアノの技巧が織り込まれた美しくも激しいワルツで、指が鍵盤を目まぐるしく駆け巡りながら、様々な登場人物を描いてゆきます。大倉さんはそれぞれの特徴を丁寧に、かつ美しい響きで演奏してくださいました。

大倉さんの音色は清涼感があって、遠くまで音が美しく響き渡ります。今回のプログラムでもバロック音楽とロマン派という離れた時代の作品に自身の音色を投影し、作品にあわせた音色で演奏してくださいました。これからも素敵な音色を大切に、澄んだ演奏を続けてほしいと思います。

 

(担当職員T)

 

 

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