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『すばるイブニングコンサート 大野謙ピアノリサイタル』公演レポート   2019.04.29

 

 

 

第46回目のピアニストは東京藝術大学1年の大野謙さんです。
大野さんのコンサートはバッハの「トッカータ ト長調」でスタートしました。しっかりとした太い音で冒頭楽章がリズミカルに奏でられていきます。アダージョでは穏やかなメロディーにゆるやかなトリルの余韻を楽しむことができました。最後のフーガでは次々とあふれる音を、両手の指がしっかりと受け流しているようでした。次に演奏してくださったのは、スクリャービンの「エチュード 嬰ハ短調」。左手がなめらかに上昇と下降を繰り返し、波打つかのようなうねりを表現すると、そこに右手は中音域で情熱的なメロディーを重ね、スクリャービンの幻想的な世界が表現されました。続いて演奏してくださったのはドビュッシーの《版画》から「塔」と「雨の庭」。スクリャービンの作品と同じような幻想的は雰囲気が漂いますが、音の響きと音色が打って変わりました。「塔」では、音域の幅が広く低音と高音が静かに響き渡り、穏やかな幻想空間を作り出します。また、「雨の庭」では、軽やかでリズミカルな音の粒が雨の様子を描いていきます。そして、最後に演奏してくださったのは、シューマンの「謝肉祭」。今度もまた、幻想的な雰囲気から一転して、輝かしくエネルギッシュな序奏で始まり、20あるタイトルの小品が続けて演奏されます。“高貴なワルツ”では、デュエットダンスのような優雅な雰囲気、“蝶々”では、羽ばたき舞う様子が印象的でした。大野さんはシューマンの溢れんばかりの創作意欲に富んだ作品を、若々しく力強く演奏してくださいました。
大野さんは音の色彩が豊かで、曲に合わせて音色も響きも柔軟に変化していきました。また、バッハの演奏で聴かせてくださったように深みのある太い音もお持ちです。これからもいろんな作曲家や作品で、豊かな色彩を放ってほしいピアニストです。

(担当職員T)

 

 

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