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『すばるイブニングコンサート 柏木千裕ピアノリサイタル』公演レポート   2019.04.29

 

 

 

第47回目のピアニストは大阪府立夕陽丘高等学校音楽科2年生の柏木千裕さんです。
柏木さんのプログラムはハイドンの「ピアノソナタXVI:50第1楽章」で始まりました。軽やかに弾むような音色がまるで春の訪れを告げているようで、強弱の使い分けも効き、楽しげな雰囲気に会場が包まれました。続いては、ショパンの「練習曲Op.10-8」。右手は美しく高音部をかき鳴らし、左手は特徴的なリズムを刻みながら、最後まで丁寧にリズムを保った演奏をしてくださいました。そして、前半の最後にはラフマニノフの「ピアノソナタ第2番第1楽章」を演奏してくださいました。力強い序奏で始まると、不安と期待が激しく交錯するかのような曲想をダイナミックに表現してくださいました。中間部では弱音が繊細に奏でられ、作品の光と影が見え隠れするようでとても印象的でした。後半には、柏木さんの好きなショパンの作品が並びました。まずは、「練習曲Op.25-11」。“木枯らし”のタイトルでも親しまれている有名な作品です。溜息のようにゆったりとはじまったかと思うと、枯葉が空を舞うように高らかに響く高音と、風圧をあらわすかのような低音の響きが、まさに木枯らしの様子を描いているようでした。続いては「スケルツォ第3番」。勢いよく、そして小気味よく音が刻まれていきます。曲想が展開する途中、下行する音の粒は煌めく清流のようで、やがて劇的なフィナーレへと向かいます。柏木さんは情熱を込めて最後までしっかりと弾ききってくださいました。そして、最後に演奏してくださったのは「バラード第1番」。柏木さんの思い入れが最も強い曲だそうで、冒頭から祈りを込めるかのようにピアノが優しく歌いだしました。それも束の間で、音楽がドラマティックに展開すると、加速力が加わって激しい様相を呈していきます。熱い演奏に音色も変化し、心につきささるような真っ直ぐな音がピアノから溢れました。
柏木さんは、ハイドンで聴かせてくださった柔らかい音色から、ショパンで聴かせてくださった剛健な音色まで幅広い音色をお持ちです。今日の経験を糧に、更に演奏に磨きをかけてくれることと思います。今後の成長が楽しみなピアニストです。

(担当職員T)

 

 

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