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『すばるイブニングコンサート 森本隼太ピアノリサイタル』公演レポート   2019.04.29

 

 

 

第48回目のピアニストは京都教育大学附属桃山中学校2年生の森本隼太さんです。
森本さんのプログラムはバッハの「平均律クラヴィーア曲集第1巻第9番」で始まりました。プレリュードでは優しく柔らかな音が安らぎの空間への扉を開き、フーガではリズミカルな曲調が朗らかな雰囲気を演出しました。次の曲はショパンの「エチュードOp.10-4」。圧巻のスピードで音を刻みつつも、時折混じる弱音がアクセントになっていて演奏にぐっと惹きつけられます。続いてはドビュッシーの「喜びの島」。音の連打が空気に振動し、音までも踊りだすかのような楽しい雰囲気に包まれます。きらめくような高音も印象的でした。トークを挟んで、後半の最初には徳山美奈子の「ムジカ・ナラ」を演奏してくださいました。この曲は2005年に作曲された古都・奈良をイメージした作品です。寺の鐘を表現した幻想的な響きで始まりますが、静けさは幽玄の世界を表すかのように神秘的で、激しさはお祭りを表すかのようにダイナミックに演奏してくださいました。次の曲はベートーヴェンの「ロンド・ア・カプリッチョ」。コミカルで特徴的なフレーズが繰り返し演奏されます。この作品の副題は『なくした小銭への怒り』、絶え間のない演奏が小銭を探している様子を描いているようでした。続いてはショパンの「3つの新しいエチュード」。ゆったりとした哀愁に満ちた第1番、優しさと喜びを感じさせる第2番、陽気で朗らかな調子を保った第3番、それぞれの特徴あるメロディーを美しく奏でてくださいました。そして、最後にラフマニノフの「ピアノ・ソナタ第2番」を演奏してくださいました。冒頭、力強くも抑制の効いた音の響きではじまると、叙情的なラフマニノフの旋律が奏でられていきます。森本さんの弱音は色や香りが感じられるような繊細な味わいで、雪が舞う凍てついた空間を、熱い演奏で溶かしてくかのような情熱的な演奏で締めくくってくださいました。
森本さんの音色はとても優しく柔らかで、聴衆へ知らず知らずのうちに演奏に耳を傾けさせる魅力があります。音楽の世界観も雰囲気もすでに確固たるスタイルを感じることができました。これからの活躍がますます楽しみなピアニストです。

(担当職員T)

 

 

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